「天然素材と先進技術の融合により、木造建築の新しいカタチを実現」
~JR山手線高輪ゲートウェイ駅舎にも採用~
本部リポート:新時代の校友企業/藤寿産業株式会社
藤寿産業株式会社(代表取締役社長蔭山寿一さん)の木・鋼ハイブリット部材が、JR山手線高輪ゲートウェイ駅舎に採用が決まりました。株式会社蔭山工務店の代表も務められている蔭山さんに今回の成果までの道のりをお聞きしました。
■会社沿革:集成材・木構造への取り組み
弊社は昭和50年6月に創業し、昭和55年より造作用集成材の製造を開始しました。福島県の住宅政策により公営住宅の大量供給の時代に品質と安定供給を求められる中、内装部材として年間1,000戸を超える部材の供給を行って参りました。昭和63年に構造用集成材のJAS認定を取得し、当時、建築基準法の規制緩和により中・大規模建築での木造化の可能性が高まる状況で部材の供給を新たに開始しました。社内に木造に特化した構造設計部門を創設し、木構造の設計~施工管理までトータルシステムでサポートを行いながら、中・大規模木造建築の設計、開発、検証を積み重ねて計画案件に対応して参りました。東日本大震災後の主力工場の移転・増設に並行して積極的な設備投資を行ってきており、現在も物件対応に特化した集成材工場として、中・大規模木造建築へ高品質な木製品の供給、設計~施工までの総合的な技術サポートを行っております。
■中・大規模木造建築の施工・納入実績
中~大規模木造建築において、福島県を中心に全国へ650を超える納入・施工実績を積み重ねております。幼児施設、学校教育施設、福祉施設、道の駅、集合・交流型施設など多様な施設への対応の中、代表的な物件を以下にご案内致します。
- H3 塙町駅舎・図書館(四角錐、円錐連続型構造)
- H7 福島県ヒラメ栽培漁業施設(最大スパン45m・アーチ構造)
- H7 那須霞ヶ城ゴルフクラブ クラブハウス&ホテル (建築面積9,710㎡・旧38条大臣認定)
- H16 福島県農業総合研究センター(ドーム型サスペンション構造・4,083㎡)
- H24 秋葉山公園県民水泳場(25,000㎡・集成材+S ハイブリット・耐火性能検証法)
- H24 群馬県農業技術センター(一般製材品による面格子シェル構造)
- H28 二本松屋内市民プール(集成材による面格子ハイブリット構造・耐火性能検証法)
- H30 パラオ共和国海洋養殖普及センター(初の海外物件)
東京・神田神社文化交流館(耐火建築・1時間耐火木造)
現在、施工中の物件として、木・鋼ハイブリット部材が採用された高輪ゲートウェイ駅や2022年栃木国体メイン会場となる新武道館など大型化、高層化する木造建築への対応を進めております。木への愛情・探求を絶やさない丁寧なモノづくり、責任施工として特注物件を確実に纏め切る対応力、創意工夫によりヒト・モノ・機械の特長を生かしきる柔軟性が藤寿産業の源です。
■設備投資:技術革新への取り組み
当社では、顧客のニーズに対応するために、毎年の設備投資を行い、技術革新の取り組みを継続的に行ってきております。特にここ数年では大型全自動NC加工機(CNC加工機)と二次接着用メガプレスの導入により、大型化と湾曲材などの特殊材への対応に取り組んで参りました。
・大型全自動NC加工機(CNC加工機)/巾 3,000mm、長さ16M まで対応可能で3D図面によるCAD/CAM データを基に、大断面材、湾曲材、CLT・LVB 等の多種の加工が可能
・二次接着用メガプレス/ 1,250mmの正角断面、長さ16M まで対応可能で各種の耐火集成材や木質部材を安定した品質で製造可能これらの設備により、「超大断面材」「耐火木材」「湾曲材」への柔軟な対応と安定した品質での提供とともに、技術革新によるリードタイム、納品期間の短縮に繋がっております。
■若手社員の積極採用とキャリア形成
ハイテク設備により木材の加工も大きな技術革新を遂げておりますが、これらの設備は全国でも3社程度しか導入していないものであり、先進的な技術をいち早く取り入れております。当社では、日本大学工学部の卒業生を中心に毎年1~2名の新卒採用を継続しており、若い社員に導入した最新設備に早い時期から携れる機会を設けている他、業務の幅を広げるべく研修会への積極的参加や資格取得に注力しております。 また、10代~30代前半の社員で構成された若い職員だけの部署を設け、若い社員の柔軟な発想を活かした体制を取り、これらの取り組みが若手社員のモチベーションの高さに繋がっているほか、長期にわたるキャリア形成を行っております。
■多様化するニーズに応える技術・研究開発
技術開発においては、産学コンソーシアムを組んで開発した耐火集成材や高強度集成材など様々な当社の技術があり、木材の技術高度化・先端技術開発に日々取り組んでおります。現在も①開発中の新型集成材やハイブリッド部材の共同開発によるこれまでより強度の高い部材の開発、②現在の1時間の耐火性能から2時間以上の耐火性能を持つ耐火部材の開発、③実用性のある接合部の開発(GIR工法の共同研究、耐火木材・CLT接合開発等)、④最新鋭加工機械の導入と実証によるより有用な加工技術、施工技術の発展・推進を積極的に行い、木質化・木造化の更なる推進に取り組んでおります。
■今後の展望
現在、国は「森林・林業再生プラン」の中で2020年までに木材自給率50%達成を掲げており、低炭素社会の実現を目指し国産材の安定供給と需要拡大に取り組んでいます。このように「エコファースト」の機運が高まる中、地球環境にやさしい生産システムで製造される木材は、今後も世の中で役立つ、必要とされる材料であると考えております。一方、木を利用するための技術はまだまだ発展途上であり、取り組んでいく課題も多い状況であります。藤寿産業では、今後も技術開発を継続し天然素材である木と先進技術の融合により、木造建築の新しいカタチを実現して参ります。
※ホームページで最新情報を発信しています。 http://www.toju.co.jp/
【写真:工場外観/代表取締役社長 蔭山寿一さん/大断面工場内風景/パラオの施工状況/木・鋼ハイブリット材/湾曲材の加工状況(2018年全国植樹祭)/新たな設備導入時の研修の様子/耐火部材の接合部性能実大燃焼試験】