「省エネ住宅を作る」~特に重要な自然温度差~
新時代の校友企業:環境建設株式会社
松谷さんは、平成4年から高気密、高断熱工法に取り組み約300棟の実績を有する環境建設株式会社の代表取締役を努められています。昨年12月には、第38回福島県建築文化賞において、環境建設株式会社さんが施工された’風流のはじめ館’(須賀川市発注)が特別部門賞を受賞されました。おめでとうございます。
松谷さんの省エネ住宅に対しての思いをご寄稿いただきました。ありがとうございました。
~日本の住宅事情
2010年ドイツで開かれたカンファレンスに於いて日本が自信をもって次世代省エネ基準を発表したところ、会場から笑いが起こり更にこの基準は義務でなく努力目標で新築住宅の30%以下しか達成できていないことに対しては失笑が広がったそうです。
世界の中でも特に緩いと言われる日本の次世代断熱基準は平成11年に提示されました。この基準を欧州の建物に当てはめると1980年代に建てられた建物の断熱基準と同等とも言われ、極めて低レベルの建物に相当します。断熱性能で先進を行く欧州は別として日本の住宅性能は、中国や韓国の公営住宅にも及ばず、先進国の中でも最低のランクに位置していることは余り知られておりません。
次世代基準は総じて低レベル
断熱住宅の先進地域でもある欧州では、省エネは法律で義務化されており基準に満たない建物は建てることができません。また、新築において、結露などが発生すれば施工者責任が問われることから住宅に関わる業者には常に緊張感をもって施工することが求められます。一方、日本ではどうでしょうか?国の提示した次世代基準は極めてハードルが低く、まして時代を先取りしたものでもなく、言うなれば守らなければならない最低基準を示したにすぎません。今後、本格的な省エネ住宅を作ろうとするならば、その指標として最低でもQ値1.0前後、そしてUA値3.0~4.0以上の性能を確保することが必要です。
自然温度差を理解する
省エネ住宅を作るうえで特に重要なことは自然温度差です。自然温度差とは室内取得熱(日射取得熱+内部発生熱)による室温と外気温の差のことであり、室内取得熱を総熱損失量で除すことで求められ、その重要性は同一間取りで有窓、無窓のプランを想定して熱計算を行うと理解できます。一般に無窓では熱を失う窓がないために省エネで暖かいと思われがちですが、窓がなければ、室内取得熱の多くを占める日射取得熱も確保できないために自然温度差は小さくなり、基準温度(快適室温-自然温度差)は大きくなります。基準温度は大きいほど快適室温を確保するのに必要な暖房エネルギーは増えることからも無窓や窓の少ない間取りほど省エネには繋がらないとする結果が出てきます。確かな省エネ住宅を作るには、断熱性能を高め、熱損失を低減すること、そして適正な窓の配置によって日射熱を活用するとともに自然温度差に着目してシミュレーションを行うことがカギとなります。
【写真:牡丹会館(須賀川市発注工事)/根柄山復興住宅(福島県発注工事)/近く完成予定の展示場人生百年時代を暮らす家/‘安芸の宮島’へ社員旅行】