「拝啓、先生」~野内 英治さん(建築学科)〜
「福島の魅力再発見」
建築学科准教授、野内英治先生(建築41回)の空間構造システム研究室では、学生が建築の構造学について基礎学力を養い、理論と解析手法について学んでいます。現在、主要な研究テーマとして、空間構造物の極限状態における簡便な線材要素の開発と、歩行者の動線シミュレーションによる最適な空間構成に関する基礎的研究を行っています。 ご寄稿ありがとうございました。
~大学に籍を置いて早23年余り。学生時代(平成元年入学)から数えるとおよそ35年も福島は郡山の地でお世話になったことになる。とっくに実家(島根県松江市)暮らしの月日より遙かに多くの時をこちらで過ごした。工学部に来た理由は、単に父親の出身校だからでありこれという目標があったわけではない。しかし今になってみると妙な縁があったようで、卒研でお世話になった倉田光春先生が、まさかの父親がお世話になった倉田博先生のご子息であった。どういうわけか研究室を引き継ぐ形(倉田研の卒論・修論は私が預かっています。老朽化も著しいのでそろそろデジタル化でもしておこうとは考えていますが、なかなか暇が・・・)で、現在16号館で構造系の研究室を主催している。
大学生活も長くなるとときどき卒業生が研究室を訪ねてくれる。先輩もいれば、この歳になると教え子の方が多くなるのだが、県外から来校される方から福島の魅力について教えられることがある。本人はその土地で暮らしているとなかなか気づかないものだ。カレル・チャペック風1)に語るなら、あるいは、水上勉2)でもいいのだが、こんな感じか。
4月、さくらは全国的に咲くが三春の滝桜は特筆すべき風物詩だ。時期が逢えば早朝から見に行ったものだ。朝4時に研究室集合と先生に命ぜられ、誰が集まるのかと訝しんだが、思いのほか人数が集まったことに驚いたものだ。5月、少し暖かくなりGWになると福島では田植えが始まる。山々はゴルフやアウトドアにいい季候で近場に良い場所が複数ある。関東圏に比べるとゴルフ場の料金等は格安らしい。家庭菜園では夏野菜を定植する。6月、梅の実を収穫し梅干しにする。ご近所では梅は漬けるものらしく、庭先で干していたら笑われた。二週間程度で終わるがサクランボもこの時期だ。果樹園の直売所を探す。良いところにあたると樹上完熟の素晴らしいものにあえる。サクランボが終わると桃の季節だ。桃が終わると・・・福島は果樹王国でもあったらしい。
夏になると、原発事故でケチがついたが(現在、海釣りは盛況らしいが)、いわきの海に潮干狩りに出かけ、大量のアサリを翌日の研究室にて酒蒸しにしたものだ。秋になると山々は涼しくなり外遊びが再燃する。11月、蜂蜜を搾りに嫁の実家に向かい、12月に卒研の予稿集が終わった頃、裏磐梯は雪で覆われ、スキー場が開かれる。桧原湖のワカサギ釣りは11月が解禁だが、氷上の穴釣りは2月頃まで待たないといけない。3月に梅の花が咲き始めると家庭菜園の種芋を求めてホームセンターを彷徨う・・・。~
1)カレル・チャペック、園芸家12カ月、中公文庫など
2) 水上 勉、土を喰う日々-わが精進十二ヵ月、新潮文庫
【写真:愛猫と/あかしや建友会での研究発表】