支部・部会リポート:関東支部リポート
「新たな環境への挑戦に繋がった、日大生として学んだこと。そして東京で学ぶ今でも福島で挑戦したいこと。」
大学時代、「高田さんが経営される上妻(あがつま)下宿:郡山市田村町徳定」で4年間を過ごされた永見さんは、今春、建築学科を卒業され、現在慶應義塾大学大学院修士課程1年生で空間・環境デザインを勉強されています。卒業されても福島との“縁”を大切に想う永見さんに、現在までを振り返りご寄稿いただきました。ありがとうございました。今後のご活躍をお祈りいたします。
コロナ元年で入学した日大工学部
私は日本大学工学部建築学科に2020年に入学しました。当時はコロナ禍で入学式もありませんでした。1ヶ月遅れて始まった授業も、オンライン。それでも日大生としての4年間は「自主創造」の精神を実践した、あっという間の時間でした。
1番はじめの挑戦で、充実した4年間のきっかけになった消防団。
私は転勤族だったことや幼少期の途上国での生活から、建築のまわりに存在するコミュニティーや、地域社会なども含めて「暮らし」に関心がありました。大学の授業では建築について学び始めることができていましたが、それ以外を追求するには、自分で世界を広げなければならないと思いました。消防団は、地域の安全と防災に貢献する重要な役割を担っています。市町村が設置する地域住民による組織です。私は1年生の夏休みから所属し、地域の方々との日々の中で身を持って、建築よりも大きい「まち」という単位で「暮らし」に向き合った時間でした。
郡山市消防団徳定班の送別会。消防団で活動されている方々は多職種だからこそ地域防災を担うことができます。
視点を変えて、多くの「まち」と出会いながら俯瞰したローカルメディアでの時間。
郡山市清水台のBlue Bird apartment.を拠点にするreal local 郡山には、2年生の夏から参加しました。ここからより一段と活動範囲が広くなりました。福島県内各地のまちを歩き人々と出会い、メディアとして面白さと豊かさを発信してきました。また実際に福島の魅力に触れることができる「清水台つくしまつり」を企画・運営しました。
取材では暮らしの中にある面白さを発見すること、ライティングでは丁寧に積み重ねた言葉でなければ伝えたいことは残らないこと、「清水台つくしまつり」ではプロジェクトを地域と共につくり上げていくことを学びました。
real local 郡山のメンバーは学生だけでなく、行政職員、コピーライター、建築士などが所属しています。
吸収したことを自分でやってみた学生団体Chi縁。
2年生の春には、学生団体Chi縁を立ち上げました。地域に入り込んでいくことで、まちの資源からカタチだけではない「モノ」や「コト」のデザインをするチームで、空き家のリノベーションやストリートファニチャーなどの活動をしました。研究室配属が3年秋ということもあり、私が入学時に欲しかった、学びをアウトプットする環境を残したいと思っています。学生自身の主体性によって、挑戦したいことに社会で取り組めることは、責任も伴う大きな学びに繋がっていると思います。
学生団体Chi縁は毎年新しいメンバーを受け入れながら、学外で挑戦する環境をつくっています。
建築で何をしたいかに向き合った浦部智義研究室。
3年秋から所属した建築計画研究室では、建築が社会に何をもたらせるのかを考え続けた時間でした。元々建築を取り巻く環境含めて興味関心がありましたが、建築という意図が提案としてどのように環境に結びつけられるのかを試行錯誤し、毎日のように夜遅くまで研究室の仲間と設計課題に取り組みました。学びたいという気持ちを前面にして打ち込めた時間を、本気で取り組む仲間と過ごせたことはとても幸せな時間でした。ここから次第に、建築が社会性を持つことを突き詰めたいと考えるようになりました。
卒業設計展での様子。郡山市本町を題材に、旧国道と奥州街道を繋ぐ建築群を設計しました。
新たな環境で学んでいることを、大好きな福島で実践したい。
現在は、慶應義塾大学大学院理工学研究科に進学し、建築設計研究室に所属しています。指導教員はスペイン人の方で、外国人学生が半数近く在籍する国際的な研究室です。様々な言語が飛び交い、国際的な事例や知識と接することができる刺激的な環境です。プロジェクトチームでは都市農園の研究と参加型建築手法の実践を行っています。学部時代に気づいた「建築から社会を捉えること」を学べる研究室に身を移しています。
慶應義塾大学大学院理工学研究科 Jorge Almazán Architecture Laboratory に所属しています。
東京にいても、これからも福島で挑戦したいこと。
今でも定期的に福島に滞在し活動を続けています。大学院進学で東京に生活拠点を移しましたが、同時に福島への思いも強くなり、改めて福島での日々は多くの方々によって充実していたのだと振り返り実感しています。
現在は、都市再生推進法人でも活動しながら、学生団体Chi縁の後輩と、郡山市内における公共空間利活用の活動をしています。まちの様子や聞き込み調査からリサーチをし、まちの人々の言葉を丁寧に拾い上げることをデザインの主体とした空間をつくっています。家の中や学校、会社に留まっていた日常が公園や街路にはみ出していくような、パブリックスペースが自分の居場所になるストリートファニチャーを仮説的に設置するプロジェクトです。
在校生の皆さんへ
私の日本大学での4年間は、「家具」から「まち」まで大小様々なスケールから建築を考える経験をしてきました。これは日々の先生方との関係性から生まれた好奇心が大きいです。卒業した今でも先生方にキャリアや研究、プロジェクトの相談をさせていただいています。
日本大学工学部には4年間で目標とする姿を実現するために、関心を広げられるように親身にサポートしていただける先生方や、自分の気持ちに共感してくれて一緒に挑戦してくれる仲間が集まっています。皆さんにも、ぜひその魅力的な環境を存分にいかしてほしいです。そのためのはじめの一歩となる少しの勇気の積み重ねは、思いがけない沢山の人との出会いや出来事を導き、想像もしなかった姿で卒業を迎えることができるはずです。
私が4年間で実践した「自主創造」の精神は、何にも変えがたい自信です。今後も出会いと経験を大切に、挑戦し続けたいと思っています。
上妻荘:高木さんへ
くれぐれも健康にご留意ください。