「拝啓、先生」 ~平山和雄さん(生命応用化学科)~
皆さんお元気でご活躍のことと思います。昭和51年に工業化学科に勤務して40年になり、この3月に定年を迎えます。この間、学科名は、物質化学工学科、生命応用化学科と2度変わりましたが、皆さんが過ごした青春時代を共有できたことをうれしく思います。学科名の変遷からも分かりますように、高度成長時代の工業化学科、新素材や環境が注目された時代の物質化学工学科、そしてバイオテクノロジーの時代の生命応用化学科というように、その時代の要請に相応しい学科名に変更して現在に至っています。この間、学生の気質もバブル期や氷河期などの紆余曲折を経ながら変わってきているのがよくわかります。
さて、現在私が注目している事柄を3つほど紹介したいと思います。一つ目は、放射能汚染土壌の減容化と汚染した森林資源の再生です。震災による放射能汚染が福島県を襲い、工学部も大きな被害を受けました。当時学生担当であった私は、毎日キャンパス内の6か所の空間放射線量を測定するとともに、如何にして元に戻すかということを考えていました。最終的に表土の除去による土壌除染を行うことで現在では毎時0.1マイクロシーベルト前後まで低下し、安心で安全なキャンパスに生まれ変わることができました。空間放射線量を5年間継続して測定しましたので、その変化を肌で感じることができました。一方、県外では放射能に関心のない人も多く、風評被害や除染などに対する理解が遅れているのも事実です。
2つ目はエネルギーです。バイオマスを利用したメタン発酵技術のさらなる技術革新が必要になっています。そして三つ目は健康です。特定のミネラル分が多い野菜を水耕栽培(植物工場)で作ろうとするものです。これらを進めることはLOHASの趣旨に合致しており、多くの研究者や技術者を必要とする分野です。定年後はそれらの発展に貢献したいと考えております。末筆になりますが、当研究室卒業生をはじめ会員諸兄の益々の発展を願っております。
※3月4日(土)に平山先生の最終講義が行われます。(一般者聴講自由です)