「拝啓、先生」 ~長尾光雄さん(機械工学科)~
歩ける「からだづくり」~ロコモ予防~
長尾光雄先生(機械工学科25回:福島県在住)は「変形性膝関節症(膝OA)早期診断を目指した計測支援システム構築に関する研究;センサと計測方法の開発」や「空気噴流を用いた非侵襲で生体に代表される柔軟物表面に形成されたくぼみ深さから粘弾性特性試験機の開発」、また「2020東京五輪・パラリンピック熱中症対策プロジェクト」など、健康関連の研究に取り組まれています。今回、その概要について解説いただきました。
~世の中・若者は物欲に満たされたのか、目標が見つからないのか、勤勉意欲が湧かないのか、狭い自室に閉じこもり、端末から世界とつながり、身近な人との関りの中で過ごし、親の支援とアルバイトで生活を凌いでいます。その一方で、65才からの高齢者も経済活動に参画できる社会を目指しています。世界の事情も分かりますが、世の中も、若者も、未来の人々のために、自立して歩ける「からだづくり」は必要です。
最近の研究について、健康寿命の延伸には「歩行長寿」1)からと考えており、人類は直立二足歩行に進化2)した過程の中で未だに腰部と下肢は途上にあると考えています。歩行は寿命と関わることが知られており、からだの運動機能のバランスが崩れるとロコモ(ロコモティブシンドローム、運動器症候群)状態に陥ります。ロコモを早期診断し予防する「からだづくり」はロコモ予防となり、歩行寿命の延伸につながります。研究はロコモ要因でもある変形性膝関節症(膝OA)の「早期診断支援計測システム」3)の提案と開発を医工連携4)として進めており、成果5), 6), 7)も出ています。
他に、空気噴流を用いた非侵襲で生体に代表される柔軟物表面に形成されたくぼみ深さから、粘弾性特性試験機の開発8), 9)も進めています。食品、化粧品、および工業製品への応用も期待されており、研究発表した山田悠人君が受賞10)しました。また、企業の研究開発支援の一環として、平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災で救急救命隊が現地入りした際の反省から、軽量で組立容易なパネル組立型救急救命室の試作開発を始めました。これが感染症診療に活かせるなど活用が拡大した中で、2020年夏のオリパラ(オリンピック・パラリンピック)が東京開催となりました。日本の夏は熱中症の温床でもあり、海外からの来客が快適にオリパラを楽しむためにも、熱中症予防と応急手当可能な救護所11)が提案されました。その構成部材強度試験と数値計算シミュレーション12)を手掛けています。~
文献
1)歩行長寿は「ふくしま」から
財界「ふくしま」の寄稿記事,2019.06.10発行(HPは目次のみ)
2)二足歩行に進化故の悩みと智慧
日本機械学会バイオエンジニアリング部門ニュースレター,特集寄稿,2018.09発行
3)福祉の現場から:変形性膝関節症の早期予防を目指した診断支援システム用センサの開発
(HPは目次のみ)
雑誌,地域ケアリング,2015年10月号,寄稿,ISSN 1345-0123,2015.09.12発行
(HPは目次のみ)
雑誌,地域ケアリング,2017年7月臨時増刊号(再掲載),2017.06.08発行
4)私立大学戦略的研究基盤形成支援事業,研究期間2014.4~2019.3
膝OAの早期診断支援システムの開発
5)健常膝と膝OA膝の関節信号特性
海外との共同研究成果,2018.02.18公開
6)試作BJASの写真表紙に掲載
文献5)のセンサ技術に関する国際的ジャーナルの表紙に選定,2018.11.08-HP-UP
7)優秀発表賞受賞
公益社団法人日本設計工学会優秀発表賞受賞,2018.07.24-HP-UP
8)私立大学戦略的研究基盤形成支援事業,研究期間2014.4~2019.3
正弦波空気噴流による柔軟物のヒステリシスループ挙動
9)空気噴流による正弦波負荷下での柔軟物の動的粘弾性挙動
研究成果,2018.07.18公開
10)修士課程の山田悠人君優秀発表賞受賞
日本設計工学会東北支部秋季発表大会で優秀発表賞受賞,2018.12.08-HP-UP
2018.3修了,不二ラテックス(株)に就職
11)工学研究所プロジェクト,2020年オリパラ熱中症対策プロジェクト
産官医工連携研究
12)厚板材の自由固有振動数解析をスペクトル要素(SEM)法で解く
産学共同研究の成果,2019.03公開