支部・部会リポート:九州支部リポート
『平成28年熊本地震から1年を経過して』
九州支部リポート
熊本地震から1年が経ちます。現地にお住いの西島衛治さんから、被災の身でありながら、現況をお知らせいただきました。ありがとうございます。
■熊本地震は、経験したことのない激震
二度の揺れ(震度7)は、初めに4月14日の夜9時半に起きました。大きな地震でしたが、大きな被害は特にありませんでした。しかし、2回目の4月16日未明1時半の揺れは、1回目の16倍のエネルギーで、その規模は想定外であり、体験したことのない恐怖感に包まれました。下から突き上げる都市直下型と思われました。400年間ほど巨大地震を体験してない熊本は、地震の少ない地域との評価が、地震保険業界でも織り込まれていました。特に、熊本市民(熊本市は人口73万人の政令市)には寝耳に水でした。ほとんどの市民の地震に対する警戒心は、薄かったのです。今回の本震を私の直感で「南海トラフ」の巨大地震の影響と勘違いしたほどでした。その後の報道で、まさに熊本が震源地(布田川断層の益城町)である巨大地震であることに驚愕しました。
2回目の震度7が本震で、初めの震度7が前震という想定外の巨大地震でした。2度目の震度7は、4時間以上にわたって継続的に揺れ続けました。恐怖感も長時間になり、多くの熊本県民に心的外傷後ストレス障害(PTSD)をもたらしています。本震のエネルギーは、前震の16倍もあり、多くの県民が死を予感するほどでした。個人的にも普段の血圧が40ほど高くなりました。被災者の心のケアが、長期間にわたって必要な重要事項になりました。本震直後から近隣の住民は恐怖に耐えかねて自宅前の公園の中心部に多くの人々が震えながら固まっていたのを早朝に発見しました。徒歩2分ほどの築40年ほどの大きなマンションは、1階が駐車場のピロティ形式になっていたが、その1階部分は、ほとんどが崩壊し自家用車が、つぶされていました(写真1、写真2)。近隣のブロック塀は、配筋されていたにも関わらずそのほとんどが倒壊しました。発生時刻の関係によるのか、大規模火災が少なかったのは不幸中の幸いでした。(発震時に50名が亡くなりました。その後1年過ぎて、関連死が増加し200名を超える震災死亡者になりました。)
□以下画像は平成29年4月(ほぼ1年後)の写真1、写真2と同じマンションの住戸の現状:撮影西島)
■巨大地震と福祉的配慮
今回明確になったのは、「広域避難場所」、「指定避難所」の違いでした。また、避難所も一般の避難所と「福祉避難所」の違いでした。要するに障がい者(要介護高齢者を含む)に合理的配慮を可能にした「避難所」が、「福祉避難所」でした。そして、その重要性が、再確認されました。今回、小・中学校、高校、大学などの教育施設の校庭や体育館などが避難場所や避難所に指定されました。場合によっては、行政から指定されていない「福祉避難所」を自ら立ち上げたところがあり、注目されています。現在も継続している。熊本学園大学が、そうです。反対に熊本県立大学は、避難場所でしたが、多くの避難住民が押し寄せ学生のみで対応しバーンアウトしたため4月18日に避難場所を閉鎖し、熊本県民から非難が湧き上がりました。県税の大学が、県民を守ってくれないのかという苦悩からでしょう。熊本県立大学は、教育の早期再開を優先したということでした。熊本学園大学は、かなり前から障がい者配慮をハード面だけでなくソフト面でも実践していることで有名で、熊本のバリアフリーデザイン研究会が、第1回のバリアフリー大賞で表彰したことがありました。今回も自主的に大学の福祉系の教員・研究者や執行部が、自主的に「福祉避難所」を設置しました。これまでの地元の障がい者自立NPO法人との関係が深く協働できた事例です。「福祉避難所」に熊本市から指定された熊本保健科学大学は、福祉避難所としての利用者がいませんでした。熊本市の広報の在り方や立地の課題も出てきました。
■今回の熊本地震は、福祉避難所の重要性を明確にした
地域で生活する障がい者を地域でどのようにして支援するのかは、今後の大きな目標です。今回の熊本地震で多くの教育施設が、被災しました。そのような状況でも福祉避難所を設置するためのノウハウを明らかにし、今後の災害にも対応できる「福祉のまちづくり」を構築する必要があると思います。そのためには、日本建築学会や土木学会だけでなく、都市計画学会や日本福祉のまちづくり学会等も参画し、今回の熊本地震の現状問題を精査し、障がい者(LGBT などのマイノリティを含む)や要介護高齢者にとってのノーマライゼーションが可能な震災時の福祉のまちづくりの方法を確立させ、その方法の社会的浸透を進めることが、今後の地震などの地殻変動活動期に入っている活断層列島日本の国民の生命と生活を救うことになると切に思います。なお、地震の専門家によると「布田断層」による今回の地震は、大分まで拡大しましたが、熊本市内に広く分布する「立田山断層」による巨大地震が、今後も懸念されます。熊本地震の余波は、継続されるため予断を留守さない状況といえます。