支部・部会リポート:九州支部リポート
「快適な住環境を地元の木材で!」
新時代の校友企業/海野建設株式会社
宮崎県日向市で防災活動にも尽力されている建設会社社長の海野洋光さんは、市場や倉庫で物資を運ぶ際に使われる木製パレットにヒントを得て、2017年にその軽さを生かしさらに強度を高め、しかも安価な建材「スクエアパネル」を考案しました。その後、スクエアパネルを使い簡単に作れる簡易仮設住宅や災害用ベッドの製品化にもつながりました。誰にでも作れることにこだわられているそうです。ご寄稿ありがとうございました。
海野さんのプロフィール/
大学在学中は日本大学新聞社に所属。卒業後、青年海外協力隊員としてザンビア工科大学建設学部専任講師。現在、海野建設株式会社代表取締役。一級土木・建築施工管理技士。屋外用木材が得意分野。著書にアフリカで出版した[TECHNICAL DRAWING]1986年、「新日向市駅分担執筆 彰国社2009年
~台風19号の洪水等で母校と学生にも甚大な被害をもたらされたと昨年10月市ヶ谷で行われた日本大学新聞社OB総会で聞きました。被災されました皆様には、心よりお見舞い申し上げます。昭和61年に建築学科を卒業し青年海外協力隊員としてアフリカ南部ザンビア工科大学専任講師として、建築製図の講義や途上国向けローコスト住宅の開発、アフリカの伝統的建築調査を学生と行っていました。
■きっかけ 帰国後、建設業を営みながらローコスト住宅研究は続けていましたが、平成23年3月の東日本大震災で考えが一変。快適な木造住宅の開発にあたっては、いままでの建築概念を取り払って開発しなければならないと木造住宅の新製品開発に自らハードル(条件)を課しました。
■ハードル 主要建材の「スクエアパネル」の開発では、日本標準規格として大量生産可能なパレット(1100×1100 通称「イチイチ」)と同形・地元の木材・廉価で製造可能な形状とし、解体時に産業廃棄物ではなくパレットとしてリユース。また、パネルの隙間スペースは、断熱材475*100がジャストサイズで納まります。この工法は、既製品で安価なボルトナットを基本に羽子板ボルト、羽根金物などを組み合わせて接続でき、インパクトドライバーが使えない電気の無いところでも、ラジェットやスパナなどで上棟が可能となります。建築基準法上の居室高2100㎜は、スパネル2枚を縦に立ててクリア。元々1tの荷を載せる運搬用ですから構造も強固で組み合わせた壁強度も宮崎県建築士会のメンバーと一緒に、壁せん断力試験を行い、データを揃え、実用新案も取得しました。
■強度試験 スクエアパネルは毎年、工業高校の実習にも使われ、昨年は、宮崎市内に建築確認申請・検査済証も取得したモデルハウス的なスクエアパネル事務所も新築しました。自然素材で囲まれた居室空間は好評で、校友の皆さんにも宮崎市に来ていただきぜひ見学していただきたいと願っています。
■モデルハウス 現在、特許出願中。ここまで書いてふっと母校HPをみるとこの工法と同じ思想の「ロハス工学」の研究開発が進んでいるではありませんか!驚きました。スクエアパネル工法の将来ですが、災害時家具、住宅、事務所から途上国向けの難民・低所得者層の住宅、災害時用・医療用仮設施設などを手がけていきたいと考えています。夢は、国連本部前にスクエアパネル建物の展示です。夢のまた夢ですが・・・。~
【写真/1 ザンビア工科大学授業/2 新製品に課した条件/3 強度試験/4 工業高校実習/5 パレットホーム外観/6 パレットホーム内部】