支部・部会リポート:九州支部リポート
陶芸家の仕事について
~「誰が見てもきれいと感じられるやきもの」を追究~
土木工学科を卒業後、地場ゼネコン、コンクリートのコンサルと建設業に携わっていらした工藤さんは、子どもの頃から思い続けていた陶芸家の道に舵をとり、活動が認められ、昨年、沖縄県優秀技能者等表彰を受賞されました。今後の目標は、「誰が見てもきれいと感じられるやきもの」を追究して新しい釉薬を作り続けることとのこと。 受賞おめでとうございます。ご寄稿ありがとうございました。
~陶芸家と言うと、ロクロを回して器を制作しているイメージを持つ方が多いと思います。実際には専門学校や職業訓練所、工房への弟子入り等、10年程で陶器を作る技術を習得します。その後、工房を構えても販売するノウハウが無く、続けることが難しい業界です。
自分は高校の頃まで、やきものや漆器に興味を持っていましたが、工芸の世界では食べていけないとも思っていました。子どもの頃から土や石、岩等の鉱物が好きでした。進路については、日大工学部土木工学科に進み、就職氷河期の中、地場ゼネコン、コンクリートのコンサルと建設業に携わってきました。学生時代の実習や座学、ゼネコンでの現場、コンサルでの知識の全てが陶芸に活かせていると思います。
普通の陶芸家とは異なる知識と経験が強みとなり、窯元就職後に制作方法、焼成の工程管理、材料の選別や調合等の改善、新しい作品の開発、地域貢献などへの取り組みを行っている内に、2022年11月沖縄県優秀技能者として県知事表彰を受けました。
自分は、美しさ重視の美術工芸品「石垣焼」と出会い陶芸家となりました。作品を見ただけで誰もが感動できる美術工芸を目指し、鉄釉の可能性の探求を繰り返しています。人が目で見て視覚情報から感動でき、その感動が身体の疲れや、ストレスで疲弊した心及び精神を癒せる作品を作りたいと思い2009年からやきものづくりを始めました。
当時、弟が倒れて意識不明となり、その後無事回復したので良かったのですが、「人間いつ人生終わるか分からない」という考えと、自分の「やりたいことはやってみる」という考え方、そして石垣焼と出会ったタイミングが合わさり、直感的に行動し転職しました。
視覚からの感動が、精神及び身体の癒しにつながるという実体験から、日常生活の中で石垣焼が「現代人の疲弊した心の癒しの一助になればいいな」と思います。また、少しでも心豊かな生活を送る人が増えることを期待して作陶しています。
自宅で独自の釉薬開発を行い、10年でやっと一つ完成しました。この釉薬は石垣焼の釉薬としては当主に認めてもらうことが出来ました。この開発の功績が優秀技能者として認められた大きな要因だと思います。また、石垣島やきもの祭り実行委員会の会長を2年連続で行い、昨年は石垣島に漂着した軽石の有効活用方法の模索など、地域貢献の姿勢も評価されたと思います。
最後に、今後の目標は、「誰が見てもきれいと感じられるやきもの」を追究して新しい釉薬を作り続けることです。~
【写真:作品 耀変油滴天目茶碗/表彰状/工連2022年12月号記事/八重山毎日新聞2021年9月21日記事】