「イタリアで、夢を現実に」
新時代の校友企業/オミ・タハラ
工学部の校友は、遠くヨーロッパにもいらっしゃいます。イタリアのミラノを拠点に家具デザイナーとして活躍されているオミ・タハラさんに、これまでを振り返ってご寄稿いただきました。ありがとうございました。
~こんにちは。オミ・タハラと申します。イタリアはミラノを拠点にデザイナーをしています。主な仕事はモダンファニチャー、つまり家具のデザインです。イタリアはモダン家具業界では世界的な中心地で、そこで修行を積み、独立し今に至ります。早いもので在住17年です。現在はデザイナー以外にブランドのディレクターや、企業顧問などもしています。
少し学生時代を振り返りながら、なぜ自分がイタリアでデザイナーをしているかお話したいと思います。僕らが大学生の頃、世の中はバブル崩壊後で、未来に対し全体的に諦めムード、学生にとっては就職氷河期でした。特に2000年から2001年は就職が最も厳しかった”超就職氷河期”と呼ぶそうで、僕らの世代の就職活動は、まさにその時期にあたります。就職難だった時代背景と、在学中に本屋で偶然見かけた作品 (旧帝国ホテルの設計も手がけた近代建築の巨匠、フランクロイドライトの照明器具でした) の美しさに雷に打たれた様な衝撃を受けたことが合わさり、それならいっそ興味を持った家具の分野に進んでみようと、デザイナーの道を志したのが、最初のきっかけです。
デザインは独学で学びました。当時はインターネットが普及しはじめる直前でしたので、手当たり次第に本屋を回ったり、タウンページで片っ端から家具製作所に連絡したりしていました。郡山市内でも鉄工所に突然おしかけ、作品を作らせていただいたことがあります。無償で作業場の一角を貸していただき、溶接を教えていただいたことは今でも感謝しています。傍から見たら非効率で回り道ばかりだったのかもしれませんが、家具デザインに関われれば、とにかく幸せだ!と思っていたので苦にはなりませんでした。
そのうちに作品がデザインのコンテストで入賞し、さらに後にイタリアで活躍する日本人デザイナーが、荒削りだった自分でも気に入ってくださり、弟子入りするため渡伊。イタリアをはじめ世界中のクライアントとのプロジェクトを共に経験し、その後もイタリア人デザイン事務所での経験を積んだ後に独立し、自分の事務所をスタートさせました。
2020年、コロナ禍の状況により一時帰国した際に、大学時代の同級生達と再会しました。それぞれの道を志し、様々な分野で活躍している仲間の存在は、とても良い刺激になっています。先にも述べました様にモダン家具の歴史はヨーロッパが本場でありますが、異国から来た自分が現在も活動できているのは、この仕事が好きで、デザイナーになると言う意志をずっと持ち続けられたことと、刺激し合い支え合 える仲間の存在があってこそ、かもしれません。今回の執筆は、自分が歩んできた道のりを改めて振り返る良いきっかけとなりました。寄稿の機会をいただいたことに感謝いたします。~