花火の真価~有限会社 糸井火工~
本部リポート:新時代の校友企業
2月28日、工学部に隣接する日本大学東北高等学校で、コロナ禍に卒業を迎えた三年生のために、保護者らが企画し、工学部のグラウンドを会場に卒業記念花火大会が開かれました。この花火を打ち上げたのは日大東北高校・工学部の卒業生である糸井秀一さんが代表を務める須賀川市の有限会社糸井火工です。 糸井さんに花火師としての思いを御寄稿いただきました。ありがとうございました。
福島県で創業150年 打上花火の製造・企画なら糸井火工 (itoikako.com)
~日本の花火の起源は江戸時代といわれています。享保17年(1732)、大飢餓で多くの餓死者が出て、更に疫病が流行し、国勢に多大な被害と影響を与えました。幕府の8代将軍吉宗は、翌18年(1733)5月28日(旧暦)犠牲となった人々の慰霊と悪病退散を祈り、隅田川で水神祭を行いました。この時に花火を上げたことが由来とされています。
弊社は明治6年に創業し、花火の製造、販売、打上げを福島県内中心に続けてまもなく創業150年を迎えようとしています。弊社で製造している花火は所謂「打ち上げ花火」になります。花火とは炎色反応の延長で、1つの色を表現するのに最低でも5種類以上の薬品を配合します。使用する薬品、配合比は花火業者ごとにオリジナル性があり、これが「秘伝」とも言えます。ほとんどの工程が手作業のため、花火製造には膨大な時間がかかります。そして花火の主原料は「火薬」ですから、作業には常に細心の注意をはらう必要があります。
花火は大勢の人を集めるため、昨今の新型コロナウィルス感染症によって深刻な影響を受けています。私は最初の緊急事態宣言が明けてすぐの2020年6月1日に、全国の花火業界の仲間たち11名で「全国一斉悪疫退散祈願Cheer up!花火プロジェクト」を開催しました。これは史上初の試みで、全国約320ヶ所で同時刻一斉に花火が打ち上げることとなりました。国内外100以上のメディアから取材を受け、次の日は全てのキー局でこのニュースが放送されました。
なぜ花火を発信しようとしたのか。冒頭で説明したように、日本の花火の起源は慰霊と悪疫退散でした。苦境の時、亡くなった人々と生きている人々のため、花火が必要とされたからです。
花火のチカラは特殊です。嬉しい時は、さらに高揚させてくれるように。哀しい時は、優しく励ましてくれるかのように。辛い時は、心に寄り添ってくれるかのように。花火は、見ている人の心へ合った形に変化して届きます。
人々の心に光を届ける。これが花火の真価です。
人の心へ寄り添えるもの、それが花火でありたいと思い、それを目指しています。伝統を受け継ぎながら技術革新を進め、今花火業界は次世代へ生き残りを懸けています。
最後になりますが、このような機会を頂きましたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。~