SDGsと建築
本部リポート:新時代の校友企業
ターゲット7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
ターゲット11:住み続けられるまちづくりを
回転埋設鋼管杭〈国土交通大臣認定工法〉bDパイルの貢献
~有限会社住環境設計室~
以前、校友会報にもご寄稿いただいた有限会社住環境設計室の代表を努められる影山さんは、昨年開催された「SDGs博」に工学部(機械工学科創成学研究室)・協力建設会社さんと共に出展され、長年にわたり研究・開発・商品化を進められた「回転埋設鋼管杭〈国土交通大臣認定工法〉bDパイル」を利用した地中熱利用システムについて学生らと共に来場者に解説されました。ご寄稿ありがとうございました。
ターゲット7-2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
- 建築において再生可能エネルギー利用と云えばほぼ屋根や壁に設置した太陽光発電パネルだけであり、他の様々な再生可能エネルギーの活用は、その形態、立地から困難と云わざるを得ない。
- 空気熱源ヒートポンプ(一般的エアコン)は、大気中の熱エネルギーを活用しているという点では再生可能エネルギー利用と云えなくもないが、冬期の暖房、夏期の冷房では、エネルギー消費効率はそれ程高くはならない。
- そこで、年間を通して安定した温度を保っている(不易層温度)地中熱(地表から100m以内位の熱エネルギーでほぼ100%太陽エネルギー)の活用が考えられた(初期は北欧から)。
- この地中熱利用のヒートポンプ(GSHP)の一次側採熱井は、一般にボアホール型と呼ばれ住宅一軒で深さ約100mに築造され、熱交換は高架橋ポリエチレンパイプのUチューブで行われる。
- 地中熱利用のGSHPは、エネルギー消費効率は4~6と高く省エネとなり、1台のGSHPで給湯、床暖、冷暖房、路面融雪、屋根融雪も十分可能です(実証済)にも拘らず、日本において普及を妨げている唯一の理由は一次側熱交換井築造コストが高すぎることに尽きます。
- 浅部地中熱利用のGPエコシステムでは、建物を支持する鋼管杭を一次側熱交換井として活用するので高額な工事費を必要する約100mのボアホール型採熱井は不要となり、設備コストを大幅に削減出来ます。
- GPエコシステムでは、地表から15m前後の比較的浅い地層の熱エネルギーを利用しますが、100mの採熱井と比較して特別不利な条件とはならないことを多くの実験、実証住宅で証明しています。
- GPエコシステムでは、採熱管は熱伝導率の高いステンレスパイプをパイルの中の蓄熱水の中に設置するので非常に高い熱効率を実現しています。高架橋ポリエチレンパイプの場合の採熱効率は、30w/m~40w/mですが、GPエコシステムでは150w/mの値を得ています。その結果、住宅に使用する支持杭でも十分な熱量を得ることが出来ています。
- 地中熱利用の利点の一つにエネルギーの活用と消費が自己完結型であることも再生可能エネルギー利用のし易さになっています。そしてヒートアイランド対策としても期待されます。
ターゲット11-b 2020年までに・・・災害に対する強靭さを目指す
- 日本列島は、地震列島でもあります。阪神淡路大地震、東日本大震災では多くの生命、財産が失われました。そして中・小の地震は頻発するのが日本です。
- 地震対策としては、耐震、制震、免震がありますが、免震が最も安全であることは論を俟たないことを、多くの人々は知っています。しかしながら免震工法は特に住宅では普及していないのが現実です。理由は簡単です。施工コストが高すぎるのです。
- SP免震基礎工法は、鋼管杭の曲げ弾性と靭性を十二分に活用することで地盤の地震動エネルギーを建物に伝達しにくくしたものです。鋼管杭は、一般的に建物を安全に支持する為に施工されるものですが、その杭配置計画と基礎形状の工夫で免震性能を持たせる事を可能にし、その免震効率を地盤と建物の関係等から算定可能にしたものです。この考え方、免震効果の計算は世界唯一と云えます。
- 免震の為の装置は全く不要なので免震の為の費用はありません。メンテナンスも不要です。したがって一般住宅での採用も難しくありません。軟弱地盤対策としての鋼管杭工事が免震基礎となり、軟弱地盤程、免震効率が高いことも証明されています。
- 東日本大震災では、東北六県1,098棟の施工実績で被害は皆無でした。この実績により文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞しています。胆振東部地震でも被害は皆無でした。
傾いてしまった住宅
- 地震ばかりではなく、様々な理由で建物が不等沈下することは少なくありません。
- この様な建物・工作物に対する修正工法は大別すると、地盤中に硬化材や発泡系の樹脂を圧入して、地盤を膨張させ建物・工作物を押し上げるもの、基礎下部に人が入って短い管を継ぎながら建物重量を利用して鋼管を安定地盤まで圧入し、これを支持杭として沈下修正する工法、同じ杭を施工するも、基礎直下ではなく、基礎側方に支持杭を施工し杭に回転、移動を自由に挿入したブラケットを基礎下に入れこのブラケットを油圧ジャッキ等で引き上げ沈下修正する工法等に分類できる。
- 地盤を膨張させる工法は、圧密層が厚い場合は、時間の経過の中で多くは、再沈下は避けられない。
- 基礎下部での杭の圧入は多くの土工事を要すること、又、土砂の崩壊による事故の危険性が高い、又 地下水位の高い敷地での施工は危険性が高すぎる。
- 沈下修正工事 パブ工法は、基礎の直近に回転埋設鋼管杭bDパイルを施工し、これを反力にして基礎下に挿入したブラケットを油圧ジャッキで引き上げ沈下修正する工法で杭先端は安定地盤に達し、拡底板により大きな支持力が得られるので確実な修正が可能で再沈下は施工数500棟以上で皆無である。杭施工には重機を必要とするのが一般的であるが、パブ工法では、建物基礎を反力とする分解式回転埋設機により、杭施工時に騒音、振動、残土は無いので、狭い空地、室内での杭施工が可能で、ほとんどの建築物に適用できる。室内施工が不要な場合は、住宅に居住しながらの施工も多数の実績がある。パブ工法はブラケットの形状を工夫することで、RC造、S造、大型工作物等の修正実績もあり、解体、再建築ではなく、継続使用を可能にすることで資源効率にも寄与すると云えます。